覚えたことを誰かに「話す」のが記憶に定着させる効果的な方法

memory fixation

記憶力を良くしたい…!

誰しも記憶力を良くしたいと思ったことがあるのではないでしょうか。

寝る時間を削って勉強したはずなのに、テスト本番になると全然覚えておらず苦い経験をしたり。

観たときには感動して泣いたはずの映画のストーリーも、振り返ってみると断片的にしか覚えていなかったり。

読んだ本の内容もすぐに忘れちゃうんだよね。

忘れたくないことはすぐに忘れてしまうのに、どうでもいいことに限ってなぜか覚えていたりしますよね。

結論から書くと、覚えたことを記憶に定着させるには誰かに話すことが効果的

今までの経験からして感覚的に分かる人も多いのではないでしょうか。

具体的になぜそう言えるのかを、心理学的な研究結果とともに説明しますね。

この記事を読むと分かること
  • 覚えたはずのことを忘れてしまう原因
  • 覚えたいことを効果的に記憶に定着させる方法

覚えたことが記憶に定着しない原因

そもそも人は忘れる生き物である

忘却曲線というものを知っていますか?

ドイツの心理学者であるHermann Ebbinghaus(ヘルマン・エビングハウス)により発見された研究結果を元にしたものです。

この曲線は、記憶したことが時間経過とともにどの程度忘れられていくのかを示しています。

エビングハウスは、一度記憶した情報を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合を「節約率」とし、時間経過と節約率との関係を調査しました。

(節約率)=(節約された時間または回数)÷(最初に要した時間または回数)
(節約された時間または回数)=(最初に要した時間または回数)-(覚え直すのに要した時間または回数)

https://ja.wikipedia.org/wiki/忘却曲線

調査結果は以下の通りです。

20分後には、節約率が58%であった。
11時間後には、節約率が44%であった。
約9時間後には、節約率は35%であった。
1日後には、節約率が34%であった。
2日後には、節約率が27%であった。
6日後には、節約率が25%であった。
1ヶ月後には、節約率が21%であった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/忘却曲線

この調査結果で注意すべき点は、記憶してから20分後の時点で42%の情報を忘れるという意味ではないということ。

あくまで再び完全に記憶しなおすまでにどれだけの時間を節約できたかを示しており、時間経過したときの記憶量を表しているわけではありません。

節約率についての正しい理解は次のようになります。

節約率の正しい理解

例)初めに10分かけて記憶したとして、20分後に覚え直すのにかかった時間が5分だった場合

  • 節約された時間
    10分 – 5分
    = 5分
  • 節約率
    5分 ÷ 10分
    = 0.5
    = 50%

節約率は50%

忘却曲線から分かることは、記憶は時間経過とともに指数関数的に忘却されていくということです。

人は一度覚えたことを忘れる生き物であり、時間経過とともに忘れる度合いが大きくなることが読み取れますね。

くりかえし記憶し直すことで、忘れる度合いが減っていくという研究結果も報告されています。

使わない記憶は忘れる

脳の容量には限界があり、使わない記憶は忘れます。

すべての情報を覚えていたら、あっという間に容量オーバーになってしまいますからね。

一説によると、現代人が1日で得る情報量は江戸時代の1年分に匹敵するとも言われています。

音楽を流しながらスマホでゲームをするなど、複数の感覚器を同時に使っているのが当たり前な僕たちの生活と比較すると、そのくらいと言われても理解できるのではないでしょうか。

情報過多の現代では、情報を取捨選択する必要があるので使わない記憶を忘れるという頭の働きはより顕著になっています。

忘れることとは、言い換えれば柔軟性をもつこと。

脳機能に余裕を持たせておくために、使わない記憶を忘れる仕組みになっています。

情報を整理できていない

新しい知識を入れたとしても、頭の中で情報を整理できていなければ忘れます。

新しい知識を入れるということは、脳のアップデートをするということ。

大枠を捉えて何となく分かった気になっているだけでは、すぐに忘れてしまいます。

頭に入った新しい情報を整理して、自分の理解に落とし込んだ情報という形に変えないと記憶として残りません。

どのようにして整理すると理解しやすいのかは、人それぞれの「認知特性」によって異なります。

認知特性について、詳しくはこちらの記事に書いています。

>>認知特性とは|自分の得意な考え方や記憶の傾向を知る

長期記憶に移行できていない

心理学の分野において記憶は3つに分類されており、保持される時間が短い順に並べると次のようになります。

記憶の分類3つ
  • 感覚記憶
    3つの記憶のうち保持される時間が最も短く、数秒程度で忘れる記憶のこと
  • 短期記憶
    感覚記憶から移行した記憶であり、最大で数十秒程度は情報が保持される記憶のこと
  • 長期記憶
    短期記憶から移行した記憶であり、最大で一生保持される記憶のこと

これら3つの記憶は、段階的に移行していきます。

はじめに、視覚や聴覚などの五感を通して得られるすべての情報が感覚記憶として得られます。

次に短期記憶に移行しますが、短期記憶で一度に記憶できる情報量(数)には上限があることも知られており、一般的な成人では7±2程度と言われています。

この7±2という数をマジカルナンバーと言います。

最後に短期記憶は長期記憶に移行します。

長期記憶は短期記憶とは異なり記憶できる情報量に上限がなく、長期記憶に移行した記憶は忘れることはないとも言われています。

記憶できる情報量に上限がない
= 忘れたように見えても、情報自体は頭の中に残っている状態

長期記憶への移行は脳の「海馬」という部位が司っており、そこで精査された情報のみが記憶に定着する仕組みです。

つまり、記憶に定着させたい情報は長期記憶として保存しておけばいいということです。

では具体的にどうすれば長期記憶として保存できるかが重要ですよね。

次に、ある研究結果をふまえながら記憶に定着させるための解決策を説明します。

覚えたことを誰かに「話す」ことで記憶に定着する

2017年に、ベイラー大学の心理学者メラニー・セケレス博士が発表した研究結果です。

研究の内容は以下の通りです。

まず、平均21歳の大学生60人を集め、20人ずつ3つのグループに分けました。

学生は約30分にわたって、過去に見たことのないであろう40本の映画から24秒のシーンを見せられました。

その後、上映後数分から7日間ののちにどれだけ内容を覚えているかを調査しました。


いずれのグループの参加者も、長い時間が経つにつれて映画の詳細な内容についてあまり思い出せなくなることに変わりはありませんでした。

しかしその中でも、上映後​​すぐに映画の内容を誰かに話したグループは、時間が経ってもより詳細まで覚えていたとのことです。

この研究結果は勉強にも同じように活かせる結果であると、メラニー・セケレス博士は言っています。

This has to be actively replaying or re-generating the information — for example, by telling someone the particulars, as opposed to just simply re-reading the textbook or class notes and studying it again later.

意訳
教科書やノートなどを単に読み直して後でもう一度勉強するのではなく、覚えたことを誰かに伝えることによって、より長期間にわたって詳細な記憶を保持できます。

https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&story=176436

覚えたことを誰かに話すためには、自分の頭の中にある情報を言葉に変換する必要があります。

あいまいな理解ではうまく話すことができないため、話すために一旦情報を整理するという作業が記憶に定着させることに繋がるのだと思います。

また、メラニー・セケレス博士は次のようにも言っています。

The “replaying” method takes considerable effort, but it can be worth it.

意訳
覚えたことを誰かに話すのは労力がかかるが、それに見合うだけの価値があります。

https://www.baylor.edu/mediacommunications/news.php?action=story&story=176436

つまりこの研究結果から、次のような能動的な行動をすることが記憶の定着に効果的だと言えます。

能動的な行動
覚えたことを誰かに話したり、教えたりする

受動的な行動
人の話を聞くだけ、資料や教科書を読むだけ

まとめ

この記事では、覚えたことを忘れる原因と忘れないようにするための解決策について説明しました。

人はそもそも忘れる生き物であり、得た情報のすべてを覚えておくことができません。

忘れないためには覚えたことを長期記憶としてい保存する必要があります。

そして、長期記憶としてしっかり定着させるためには、能動的に覚えたことを誰かに話すことが解決策だということ。

能動的な行動
覚えたことを誰かに話したり、教えたりする

友達にでも、家族にでも、なんなら自分に対して話す場合でも効果があるでしょう。

今まで感覚的に行ってきた人も、そうではない人も、覚えておきたいことは意識的に誰かに話すようにしていきましょう。

今まで話すことが苦手で避けてきた人なら、より効果的かもしれません。


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